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もと @moto_ai_jp

第7部 グラフのあと(2026年のいま) · 第17回 / 全20回 · 15分くらい

何日も続く作業を任せるときの設計。引き継ぎ・区切り・外の判定

AIが一人でやり切れる作業の長さは、ここ数年で大きく伸びてきました。何時間、何日と1つの目標に向かうとき、AIは途中で窓が尽き、記憶が途切れます。この回では、Anthropic が長時間の作業のために作った仕組みを手がかりに、引き継ぎの設計を見ていきます。人のチームの引き継ぎとよく似ています。

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この回を読み終えると、できるようになること

  1. AIに任せられる作業の長さがどう伸びてきたかを、計測の報告をもとに説明できる
  2. 長い作業で起きやすい失敗(早すぎる完了宣言、やりすぎ、散らかったまま終わる)と、その対策を言える
  3. 引き継ぎのファイル・1つずつの区切り・外の判定・決まった始め方を、自分の作業に取り入れられる

専門用語は、初めて出たところで括弧に短い説明を付けています。説明が長くなるものには ※番号を付け、ページの終わりの用語メモにまとめました。

1任せられる作業の長さは、およそ7か月ごとに倍になってきた

研究団体の METR は、AIが半分の確率でやり切れる作業の長さ(人がやると何分かかる作業か)を測っています。2025年3月の報告では、この長さが過去6年間、およそ7か月ごとに倍になってきたとしています。この調子が続くかはわかりませんが、「数分の作業」から「数時間〜数日の作業」へ、任せられる大きさが変わってきているのは確かです。

任せる作業が長くなると、新しい問題が出てきます。1つの窓では作業が終わらない、という問題です。

2長い作業は「記憶のない人」の交代制

Anthropic の記事「Effective harnesses for long-running agents」は、長い作業の難しさをこう説明しています。作業は区切られた回(セッション)に分かれていて、新しい回は、前の回のことを何も覚えていない状態で始まる。記憶のない技術者が、交代でソフトウェアを作っているようなものだ、と。

同じ記事は、うまくいかなかったときの典型として、次のような形を挙げています。

  • 早すぎる完了宣言:全体がまだなのに「完成しました」と言ってしまう
  • やりすぎ:一度に多くのことに手をつけ、途中で窓が尽きる
  • 散らかったまま終わる:直しかけのまま回が終わり、次の回が何が起きていたのかわからない
1日目の回記憶が切れる2日目の回続きから始める3日目の回続きから始める確かめ役完了を判定📁 AIの外に残すものplan.md(計画)progress.md(進み具合)log(記録)完成の条件は先に渡しておく
第2世代の「前提をファイルに置く」を、AIが自分のためにやる形です。

3最初の回で、引き継ぎの土台を作る

同じ記事の解決策は、最初の回だけ特別な役(初期化の役)を置くことでした。その役が次のものを用意します。

  • 環境を立ち上げるスクリプト(init.sh)
  • 何をしたかを書き足していく進み具合のファイル(claude-progress.txt)
  • 作るべき機能を、最初から最後まで書き出した一覧(JSON のファイル)。それぞれに「できたか」の印を付ける
  • 最初の時点の git の記録(コミット※1)

2回目以降の回は、この一覧と進み具合のファイルを最初に読み、1つの機能だけを選んで進めます。機能の一覧があることで、「全部できた」と早まって言いにくくなります。

41回に1つずつ、きれいな状態で終える

同じ記事によると、1回に1つの機能だけに取り組ませる(少しずつ進める)ことが、やりすぎを防ぐのに決定的に効いたそうです。そして1つ終えるごとに、説明つきでコミットし、進み具合のファイルに書き足して、次の回がすぐ始められるきれいな状態で終えます。

コミットが区切りとして残っていれば、次の回で壊れていることに気づいたときに、直前の区切りまで戻せます。

5「完了」は、AIの自己申告ではなく外で判定する

AIは、自分の仕事を早めに「終わりました」と言いがちです。終わりの条件は、テストや評価セット(第10回)の形で先に渡し、AIの申告ではなく、外の検査が合格を出したら完了にします。入門編で触れたとおり、Claude Managed Agents にも、終わりの条件を渡して別に判定させる機能があります。

自分の環境では、長い作業の完了の条件を「テストが全部通ること」にして、作業メモの最後に書いておくようにしています。

6毎回、決まった手順で始める

毎回の始めに、次の3つを決まった手順にしておきます。

  1. 進み具合のファイルと、引き継ぎのメモを読む
  2. 直前のコミット(区切り)を確かめる
  3. テストが通る状態かを見る

前の回が壊したまま終わっていないかを最初に確かめるだけで、事故がかなり減ります。壊れていたら、新しい機能に手をつける前に、まずそれを直します。

7記憶は、整えないと古くなる

長く働くAIの記憶やメモは、放っておくと、第8回の「前提が古くなる」と同じことになります。古くなった記述を消し、重なりをまとめる時間を、仕組みの中に入れておきます。人のチームでいえば、引き継ぎのメモを定期的に読み返して、手順書を直す作業にあたります。

誤解よくある思い違い

窓が大きいモデルなら、長い作業も1回でやり切れる

どんなに大きな窓も、何日分の作業は入りません。回をまたぐ前提で、引き継ぎのファイルと区切りを設計します。

AIが「完成しました」と言ったら完成

AIは早めに完了と言いがちです。テストや評価セットなど、外の検査で判定します。

演習手を動かして確かめる

演習1

アプリの開発をAIに数日かけて任せています。毎朝の回の最初に、AIが前日の続きではなく、すでに作った機能をまた作り直していることに気づきました。何が足りないでしょうか。

答えを見る

前の回で何をしたかを、次の回が知る手段が足りません。①作るべき機能の一覧に「できたか」の印を付ける、②進み具合のファイルに、終えたことと次にやることを書き足す、③1つ終えるごとにコミットする、④毎回の始めに①②を読むよう決める、の4つを入れます。

自分の環境では、AIが作業の終わりに「次に読むべきこと」を1枚にまとめ、次の回の最初にそれを読む形にしています。人の引き継ぎメモとほとんど同じです。

用語メモ本文の ※番号の説明

  1. ※1コミット git でファイルの変更を、説明をつけて1つの記録として残すこと。あとから、その時点の状態に戻したり、何を変えたかを見比べたりできる。 本文へ戻る ↩

出典確かめた資料(2026年10月時点)

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