第2部 削る · 第4回 / 全12回 · 10分くらい
最初の1人に要るものだけを残す。完成の条件を先に書く
期限を決めても、「何ができたら出してよいか」が曖昧だと、作業は終わりません。この回では、最初の1人の使い方から完成の条件を逆算し、作る前に書いておきます。AIエンジニアリング講座の「合格の条件を先に決める」を、出すための判断に使う回です。
履修 0 / 12 回
この回を読み終えると、できるようになること
- 最初の1人の使い方を、具体的な手順として書ける
- 手順から、出すための完成の条件を「はい/いいえ」で書ける
- 条件に入らない作業を、次の版の一覧に移せる
専門用語は、初めて出たところで括弧に短い説明を付けています。説明が長くなるものには ※番号を付け、ページの終わりの用語メモにまとめました。
1使い方を、手順として書く
最初の1人が、そのアプリで何をするのかを、手順として書き出します。
- アプリを入れて開く
- スマホの写真フォルダを選ぶ
- 重複している写真の一覧を見る
- 消す写真を選んで、ゴミ箱に移す
- 間違えたら元に戻す
このくらい具体的に書くと、作るべきものがはっきりします。逆に言えば、この手順に出てこない機能(並べ替えの種類、テーマの色、共有機能)は、最初の版では要りません。
2手順から、完成の条件を書く
手順の1行ずつを、「はい/いいえ」で確かめられる条件に書き換えます。
- 初めての人が、説明を読みながら5分以内に開けるか
- 1万枚のフォルダを選んで、3分以内に重複の一覧が出るか
- 消した写真を、元に戻せるか
全部が「はい」になったら出す。そう決めておくと、作業の終わりが見えます。AIエンジニアリング講座で扱った評価セット※1の考え方を、出す判断に使っているわけです。
3データを失わないことは、必ず条件に入れる
どんなに小さく出すときも、相手のデータを失わないことは条件から外しません。消す・上書きする・移す機能があるなら、元に戻せるか、少なくとも消す前に確認があるかを確かめます。
出したものが相手のデータを壊すと、そのアプリだけでなく、自分が作るもの全体への信頼がなくなります。機能が少ないことは許されても、データを失うことは許されません。
4条件に入らない作業は「次の版」の一覧へ
作っている途中で「これもあったほうがいい」と思いついたら、その場で作らずに、次の版の一覧に書きます。書いておけば忘れないので、安心して今の版に集中できます。
出したあと、最初の1人の反応を見てこの一覧を読み返すと、半分くらいは要らなかったとわかることがよくあります。思いつきの段階で作っていたら、その時間は無駄になっていました。
5条件を確かめる作業をAIに任せる
完成の条件が「はい/いいえ」で書けていれば、確かめる作業の多くはAIに任せられます。「この条件の一覧を、今のアプリで1つずつ確かめて、はい/いいえと根拠を表にして」と頼みます。
ただし、「初めての人が5分以内に開けるか」のように、自分で確かめられない条件もあります。これは最初の1人に試してもらうしかありません。機械で確かめられる条件と、人に試してもらう条件を分けておくと、出す前の確認が速くなります。
誤解よくある思い違い
機能が多いほど、使ってもらえる
最初の1人がしたいことが1つできれば、使ってもらえます。機能が多いと、むしろ何をするアプリなのかが伝わりにくくなります。
演習手を動かして確かめる
演習1
「家計簿アプリ」を、共働きの夫婦に最初に使ってもらいたいとします。2人がしたいことを手順で書き、完成の条件を3つ、「はい/いいえ」で書いてください。
答えを見る
例:手順は「①買い物のあとにスマホで金額と分類を入れる ②月末に2人の支出の合計を見る ③どちらが払ったかで精算する」。
条件は「①金額と分類の入力が10秒以内で終わるか ②2人の端末で同じ数字が見えるか ③入力を間違えたとき、あとから直せるか(データを失わない)」。グラフやレシートの読み取りは、次の版の一覧に回します。
頼み方そのまま使える頼み方の例
次の作りかけについて、最初の1人の使い方を手順で書き、そこから「出してよい」と判断する完成の条件を作ってください。
- 条件は「はい/いいえ」で確かめられる形にする
- データを失わないための条件を必ず1つ以上入れる
- 機械で確かめられる条件と、人に試してもらう条件を分ける
- 手順に出てこない機能は「次の版」の一覧に分ける
作りかけ:(何をするものか)
最初の1人:(どんな人か) 用語メモ本文の ※番号の説明
- ※1評価セット 「この入力なら、こういう結果になってほしい」という組を集めたもの。AIエンジニアリング講座・実践編の第10回で扱った。ここでは「この条件を満たしたら出してよい」という完成の条件の一覧として使う。 本文へ戻る ↩